ルーツ「いらっしゃい、ユミル。今、御茶を淹れましょう」
ユミル「きょうも、へんなおくすりいりですか?」
ルーツ「当然です。ユミルには何時までも可愛らしいままで居て貰いたいですから」
ユミル「はい、おにいさま」
ルーツ「そう、何時までも何時までも幼く可愛らしいままで……」
ユミル「おにいさま、おにいさまのまりょくがくろっぽくなったきがします」
ルーツ「おっと、それはいけない。ユミルに隠し事は出来ませんね」
ユミル「はいなのです。でも、なにをかんがえているのかまではわからないのです」
ルーツ「前にも言いましたが、ユミルが飲んでいるのは成長や老化を止めて、ずっと幼い姿のままにするお薬です。少し寿命は縮んでしまいますが、構いませんよね?」
ユミル「はい、おにいさま」
ルーツ「よしよし、ユミルは良い子ですね」
ユミル「ふにゅ〜」
ユミル「おにいさまは、ゆみるがちいさいからすきになったのですか? それとも、ゆみるがゆみるだからすきになったのですか?」
ルーツ「おや、ユミルに好きだと言った事が一度でもありましたっけ?」
ユミル「……よそうすらしていなかったきりかえしです。でも、たしかにすきだといわれたきおくはありません」
ルーツ「冗談です。愛していますよ、ユミル」
ユミル「むう。それで、どちらなのですか?」
ルーツ「実は両方です」
ユミル「りょうほう?」
ルーツ「ええ、大人になったユミルもきっと可愛いでしょうし、幼女は言うまでもなく大好きです」
ユミル「ゆみるがおおきくなってもきらいにならない?」
ルーツ「嫌いになんて、なる訳がないではありませんか。……小さい方が好きですが」
ユミル「そうなの?」
ルーツ「はい。ですからちゃんとお薬を飲みましょうね」
ユミル「はーい」
ルーツ「いらっしゃ……おや、兄上。兄上がここに来るとは、珍しいですね」
ルーク「嗚呼、たまには顔を出そうと思ってね」
ルーツ「今、御茶を淹れましょう」
ルーク「妙な薬は入ってないだろうね?」
ルーツ「……信用されていませんね」
ルーク「あはは、冗談だよ」
ルーツ「新作の筋力増加剤しか入れていませんよ」
ルーク「……まさか、本当に入っているとはね」
ルーツ「この程度は嗜みですよ」
ルーク「何の嗜みだよ……少なくとも王族の嗜みではないね」
ルーツ「マッドな研究者の嗜みです。人体実験をするならまずは身内から」
ルーク「この店、よく潰れないね?」
ルーツ「客にはまともな物を出していますから」
ルーク「…………」
ルーツ「おや、飲まないのですか。冷めてしまいますよ?」
ルーク「怖くて飲めないよ!」
ユミル「おにいさま、どうすればおいしいおちゃがいれられるの?」
ルーツ「それはね、毎日御茶を飲んでいると、いつの間にか美味しく淹れられる様になるのですよ」
ユミル「おにいさま、どうすればまほうがつかえるの?」
ルーツ「それはね、昔の本を読んでいると、何時の間にか使える様になっているのですよ」
ルーク「……言っておくけど、そんな事が出来るのは君だけだからね」
ユミル「るーくおにいさまもいたのですか?」
ルーク「嗚呼、妹に存在を認識されてなかった……」
ルーツ「……申し訳ありませんが、私も認識していませんでした」
ルーク「嗚呼、弟にまで……」
ルーツ「それはさておき。兄上、御茶が冷めてしまいますよ?」
ルーク「嗚呼、そうだね。認識されてなかったなら、普通の客用だろうし……」
ルーツ「いえ、身内に薬を盛るのは脊髄反射ですから、具体的にどんな薬かは分かりませんが、恐らく何かは入っていますよ。嗚呼、ユミルはいつものお薬ですから御安心なさい」
ユミル「はい、おにいさま」
ルーク「…………」
ルーク「ねえ、ルーツ」
ルーツ「どうしましたか兄上?」
ルーク「この前、ユミルにも妙な薬を飲ませているって言ってたよね?」
ルーツ「妙とは心外な、一応臨床実験はしています」
ルーク「……成功したんだろうね?」
ルーツ「今の所、不具合は確認されていません」
ルーク「今の所って……それで、どんな薬なの?」
ルーツ「成長及び老化を抑制する薬です」
ルーク「……物凄く物騒な薬の気がするんだけど」
ルーツ「理論上では、老化の抑制時の魔力核への過負荷による寿命の現象以外には、副作用もないはずです」
ルーク「……普通に物騒な薬だよ。そう言えば、ルーツの側仕えに明らかに発育不全の娘が居た気が……」
ルーツ「嗚呼、サラですか。そろそろ、本人に同意を取って詳細なデータを集めようかと……」
ルーク「しかも同意すら取ってなかったの! あの娘、凄く気にしてたよ……」
ルーツ「おや、女性は小さい方が可愛らしいのに」
ルーク「自分の性癖を人に押しつけるのは止めた方が良いと思うよ……」
ルーツ「そう言えば、御茶は飲まないのですか?」
ルーク「だから、怖くて飲めないよ!」