まだ死が絶対だった頃、一柱の神様が生まれました。
その神様には、手も足も、頭すら有りません。
そう、神様は単細胞生物だったのです。
神様は、自分が何故生まれたのか知りません。
人間の形をした神様なら、自分が何故生まれたのかを考えるのかもしれませんが、その神様は何も考えませんでした。
何故なら、神様は単細胞生物なので脳味噌がないのです。
神様には物を少しだけ軽くする力がありました。
重力を操って軽くするのではなく、質量を何処かにやってしまうのでもなく、ただただ結果として軽くする力です。
とんでもない力ですが、神様は一度もその力を使いませんでした。
力を使おうと思うだけの知性がなかったからです。
もし使ったとしても、本当に少しだけしか変わらないので、誰にも気づかれなかったでしょうが。
次の日、神様が住んでいた水溜まりが乾いて、神様は死んでしまいました。
神代の時代にはこうやって、人知れず生まれて人知れず死んでいく神様が沢山居たという事です。