「三!」
必要以上に力の入った、男の声が告げる。
「にい」
次に抑揚のない、少女の声が告げる。
「一!」
先程の男が、更に力を込めて告げる。
「ぜろ、皆様、あけまして、おめでとうございます、です」
最後に、少女が独特の口調で新年の祝いを述べた。
ここは、魔王協会本部が存在する世界の一角。
とは言え、この世界には魔王協会本部とその関連施設以外に、これと言った物は存在しておらず、白い平面と嘘臭いほどに晴れ渡った青空が、どこまでも広がっているだけなのだが。
しかし、今日は白い荒野の上に幾つかの建造物が仮設されていた。
「今年もよろしくお願いします、御主人様!」
「はい、こちらこそ」
越年の集い(旧世界の宮中行事から名前を取っているが、実際にはただの年越しカウントダウン大会)の司会をこなすファランクスと人形遣いを眼下に見ながら、会長専用の特別席で永久と新年の挨拶を交わす。
「はい、お年玉」
「ありがとうございます、御主人様!」
予め用意しておいたお年玉を永久に渡す。
「御主人様、これって異空間ですか?」
お年玉袋の中は異空間になっていた、最新鋭の設備と膨大な魔力を費やした一品である。
さらに、その広大な異空間には、魔王協会の通貨であるグリムが理論上の限界まで詰め込んである。
「はい、異空間の収容能力の限界に挑戦してみました。後で一緒に数えてみましょう」
「はい、御主人様!」