「そう言えば、御主人様」
「何ですか、永久?」
とある巨木の木陰で涼んでいると、永久が何かを問いかけてきた。
「私は、子供なのですか? 大人なのですか?」
成る程、永久の外見は十を少し過ぎた程の子供だが、実年齢は百を越える。
更に、永久の年齢は人として見るのならば明らかに大人ではあるものの、彼女は人ではなく、怪異としても類例の少ない上に、寿命や成長過程が一様ではないダンピールだ。自らが子供か大人かを悩んでも不思議ではない。
……そうですね。
「永久の好きな方で良いと思いますよ?」
「私の?」
私の答えが意外だったのか、小さく首を傾げる永久。
「元々、子供か大人かの、明確な区切りがある訳でもありませんし、永久の場合は尚更です。ならば、自分の好きな様に決めれば良いと思いますよ」
永久はコトンと私に身を預けてきた。
「はい、御主人様。なら、私は子供が良いです。子供なら、こうして御主人様に甘えられるから……」
それだけ言うと、永久は私の首筋に牙を埋めて、私の血をすすり始めた。
暖かな風が通り抜けていった。
叶うなら、どうか何時までもこの様な日々が続きます様に。